低糖質スイーツのレシピによく出てくるエリスリトール。ラカントSなどの甘味料の主成分で、糖質・カロリーがほぼゼロと紹介される一方、「人工甘味料は体に悪いのでは」と不安に思う人も多い。ここでは感覚や体験談ではなく、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)やEFSA(欧州食品安全機関)、日本の食品安全委員会という公的機関が実際に何を評価し、何を結論しているかを、一次情報にもとづいて整理する。
エリスリトールとは何か(甘味料としての位置づけ)
エリスリトールとは、ぶどうや梨などの果物やきのこ、味噌・醤油などの発酵食品にも微量に含まれる「糖アルコール」の一種で、工業的にはぶどう糖を酵母で発酵させて作られる。砂糖(上白糖)の代わりに甘みをつける目的で、低糖質スイーツ向けの甘味料に広く使われている。
日本では食品として扱われ、食品添加物には分類されていない。ラカントS(サラヤ株式会社)のようにこの甘味料と羅漢果エキスを配合した商品が、糖類0g・エネルギー0kcal(100gあたり、メーカー公表値)として販売されている。体内でほとんど代謝されず、吸収された分もそのまま血液中を流れて大部分が尿としてそのまま排泄される――これが、砂糖と違って糖質・カロリーがほぼ計上されない理由だ。
この甘味料の安全性はどのように評価されているのか(JECFA・EFSAの一次情報)
結論から言うと、「絶対安全」と言い切れる食品はない一方、複数の公的機関がエリスリトールを評価し、通常の使用量では過度に恐れる根拠を示していない。
JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)は1999年、第53回会合でこの甘味料を評価し、ADI(1日摂取許容量)について「特定の数値を設ける必要はない」という区分を出した。体重1kgあたり1gを単回で摂取した試験でも下剤様の作用は見られなかった、というのが根拠のひとつになっている。
より新しい評価としては、EFSA(欧州食品安全機関)が2023年12月20日付でこの甘味料(添加物番号E968)を再評価している。ここでは、遺伝毒性は認められないこと、限られた人数のヒト試験ながら血糖値レベルへの影響は見られないという一貫した証拠があること、現時点のエビデンスでは心血管疾患との因果関係は示されないことが結論づけられた一方、摂り過ぎによる下痢のリスクを踏まえてADIを体重1kgあたり0.5g/日に設定し直している。日本の食品安全委員会も、同日付でこのEFSAの意見を食品安全関係情報として公表・共有している。
なお、ステビアの甘味成分であるステビオール配糖体についても、JECFA第69回会合(2008年)がステビオール換算で体重1kgあたり0〜4mgのADIを設定している。エリスリトールとステビアはどちらも公的機関の評価を経て使われている甘味料だが、評価の対象や設定されている数値はそれぞれ異なる。
この甘味料と血糖値の関係はどう評価されているのか(メカニズムと限界)
エリスリトールは、他の糖質のように体内でぶどう糖に変わって血糖値を押し上げる経路をほとんど通らない、という特徴がある。前述のとおり大部分が代謝されずに尿中へ排泄されるためだ。
EFSAの2023年の再評価でも、限られたヒト試験の結果として血糖値レベルへの影響は見られないという一貫した証拠があるとされている。ただし、ここで言えるのは「血糖値をほとんど上げないというデータがある」という事実までで、「だから血糖値が上がらないから安心」と言い切れるものではない。研究の対象人数や条件には限界があり、糖尿病の治療中の人がインスリンや薬の量を自己判断で調整してよい根拠にはならない。持病がある人は、必ず医師に相談したうえで取り入れてほしい。
お腹がゆるくなるという報告は本当か(下痢作用の目安と個人差)
事実として、一度に大量のエリスリトールを摂ると下痢につながる可能性はある。ただし量と個人差の問題であり、少量で必ず起こるわけではない。
EFSAが2023年の再評価でADIを体重1kgあたり0.5g/日に引き下げたのは、まさにこの下痢のリスクを踏まえた保護的な数値だ。体重60kgの人であれば、1日あたりおよそ30gが目安の上限になる計算になる。糖アルコールは腸内で吸収しきれずに残ると水分を引き込みやすく、お腹がゆるくなりやすい人がいるのは事実だが、その感じ方には個人差があり、体調やその日摂った他の食事の量によっても変わる。心配な場合は少量から試し、様子を見ながら量を調整するとよい。
砂糖・この甘味料・ステビアの糖質とカロリーはどう違うか(比較表)
数字で比べると、この甘味料は砂糖よりも糖質・カロリーが大きく低い甘味料に分類される。目安量が近い量で比べてみると、その差ははっきりわかる。
| 甘味料 | 目安量 | 糖質 | エネルギー | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 上白糖(砂糖) | 100g | 約99.3g | 391kcal | 日本食品標準成分表(八訂) |
| エリスリトール(ラカントSなど) | 100g | 表示上0g | 表示上0kcal | サラヤ株式会社 公表値 |
| ステビア(ステビオール配糖体) | - | 製品差が大きく一律の値は示せない | 製品差が大きく一律の値は示せない | JECFAが安全性を評価(2008年) |
砂糖を完全に断つ「我慢」をする必要はない。甘さそのものはエリスリトール配合の甘味料に置き換えれば保ったまま、糖質・カロリーだけを大きく減らせる、というのがこの数字の意味だ。生クリームで作る低糖質スイーツや低糖質チーズケーキでラカントSを使っているのも、この置き換えの考え方にもとづいている。
この甘味料をスイーツにどう活用すればいいか(使い方の目安)
分量の目安を数字で持っておくと、日常のスイーツ作りでは心配しすぎる必要がない。
EFSAのADI(体重1kgあたり0.5g/日)から計算すると、体重60kgの人ならおよそ30g/日が目安になる。低糖質チーズケーキのレシピではフィリングにラカントS50gを使うが、6等分した1切れあたりに換算すると約8.3g。生クリームで作る低糖質スイーツのホイップも、生クリーム100gに対してラカントS大さじ1(約9g)が目安だ。どちらも1〜2人前を食べる程度なら、30gという目安を大きく超えることはない。
一度に何皿分もまとめて食べるような極端な量でなければ、日常的なスイーツ作りの範囲でADIを超える心配は大きくない。ただし、これはあくまで公的機関の評価にもとづく目安の計算であり、体調や持病の有無によって適量は変わる。
まとめ:低糖質スイーツにおける甘味料との付き合い方
- エリスリトールは、JECFA(1999年)やEFSA(2023年)といった公的機関の評価を経た糖アルコールで、遺伝毒性は認められず、通常の使用量で過度に恐れる根拠は示されていない。 ただし医薬品ではないため「絶対安全」と言い切ることはできない。
- 血糖値への影響については、限られたヒト試験ながら「影響しない」という一貫した証拠がある(EFSA、2023年)。 それでも糖尿病治療中の人は自己判断せず医師に相談する。
- お腹がゆるくなるかどうかは量と個人差の問題。 EFSAのADI(体重1kgあたり0.5g/日)を目安にすれば、日常的なスイーツ作りの範囲で心配しすぎる必要はない。
甘いものを我慢する必要はない。中身がわかったうえで、自分の体調と相談しながら使う――それがこの甘味料との付き合い方だ。