基礎代謝とは、何もしなくても消費されるエネルギーのことだ。驚くことに、これが1日の総消費カロリーの約6〜7割を占める。 30代の参照体重では男性で約1530kcal、女性で約1160kcalが目安になる。だから痩せたいなら、運動量よりこの土台を保つことが効く。この記事では、その仕組みと自分の数値の出し方を数字で解説する。
基礎代謝とは何か(1日の消費の何割を占めるのか)
基礎代謝とは、呼吸・体温維持・内臓の活動など、生きているだけで消費されるエネルギーのことだ。 寝ていても使われる、いわば体の「待機電力」にあたる。
1日に体が使うエネルギー(総消費エネルギー)は、3つに分かれる。安静時に消費されるこの土台、体を動かす活動代謝、そして食事をとるときに消費される食事誘発性熱産生(DIT)だ。このうち土台部分が約6〜7割と、大半を占める。
| 内訳 | 割合の目安 |
|---|---|
| 基礎代謝 | 約60〜70% |
| 活動代謝(運動・家事など) | 約20〜30% |
| 食事誘発性熱産生 | 約10% |
つまり、運動で消費を増やすより、土台を保つほうがダイエットには効く。ジョギング30分で消費できるのはせいぜい200〜300kcalで、しかも走った日にしか入らない。一方、安静時の消費が1割落ちれば1日150kcal前後の差になり、それが毎日続く。
自分の基礎代謝はどれくらいか(年代・体重別の目安)
体重に、年代別の「基礎代謝基準値」(体重1kgあたり1日に使うkcal)をかければ概算できる。 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に示されている値がこれだ。
| 年代 | 男性の基準値 | 女性の基準値 |
|---|---|---|
| 18〜29歳 | 23.7 | 22.1 |
| 30〜49歳 | 22.5 | 21.9 |
| 50〜64歳 | 21.8 | 20.7 |
単位は kcal / kg体重 / 日。たとえば体重70kgの30代男性なら 22.5 × 70 で約1575kcal。体重55kgの30代女性なら 21.9 × 55 で約1200kcal。同じ基準で参照体重(30〜49歳で男性68.1kg・女性53.0kg)を計算すると、男性約1530kcal・女性約1160kcalになる。
ただし、この基準値は参照体重を前提に作られている。そこから大きく外れる体格ほど誤差が出て、とくに体重が重い人では過大評価になりやすいとされる。出した数字は「正解」ではなく出発点として扱いたい。年齢が上がるほど基準値が下がる点も見ておくといい。18〜29歳から50〜64歳で、男性は 23.7 → 21.8。体重が同じでも、年を重ねるだけで安静時の消費は静かに減っていく。
筋肉を1kg増やすと消費はどれだけ増えるのか
増えるのは1日あたり約13kcalとされ、よく言われる「50kcal」より大幅に小さい。 ここは誤解が多い。
組織・臓器ごとの代謝率の推定では、骨格筋は1kgあたり1日約13kcal、脂肪組織は約4.5kcal。一方で肝臓は約200kcal、脳は約240kcal、心臓と腎臓は約440kcalと、重さあたりでは内臓のほうが桁違いに大きい。安静時の消費の主役は、実は筋肉ではなく内臓と脳だ。
成人男性の骨格筋はおよそ30kgとされるので、13 × 30 で約390kcal。全身の筋肉を合わせても、安静時の消費の2〜3割程度にとどまる。筋トレを数か月続けて筋肉が1kg増えても、そこから直接増える消費はご飯にすればひと口分にも満たない。
では筋トレは無駄かというと、まったく違う。意味があるのは「増やす」より「減らさない」ほうだ。減量中に筋肉を落とせば、その分だけ安静時の消費は確実に下がる。加えて、筋トレ自体で消費するエネルギーと、動ける体を保つことで維持される活動代謝が乗ってくる。狙いは上乗せではなく、防衛だと考えたほうがいい。
基礎代謝が落ちると、なぜ痩せにくくなるのか
同じ食事量でも消費が減り、収支が黒字(余る側)に振れるからだ。 極端に食事を減らすと、体は脂肪だけでなく筋肉も分解してエネルギーにする。筋肉が減れば土台が下がる。
やっかいなのはその先だ。体重や体組成から計算される以上に消費が落ちる現象(適応的熱産生)が起きるとされる。いわば省エネモードで、同じ体重の人と比べても消費が低くなる。
たとえば1日の総消費が2200kcalの人が、摂取を800kcalまで落としたとする。最初の数週間は落ちるが、やがて減りが止まる。ここで「もっと減らす」に進むと土台をさらに削り、食事を戻した瞬間にリバウンドする。カロリー収支は単純な引き算だが、引かれる側の数字が動く。これが「食べないダイエット」が失敗する構造だ。
外食中心でも基礎代謝は守れるのか
守れる。鍵は食事量を削ることではなく、タンパク質を確保することだ。 目安は体重1kgあたり1.5〜2g。70kgなら1日105〜140gになる。外食でも、意識すれば積める量だ。
吉野家の牛丼(並盛)はタンパク質21g・糖質57g・635kcal。同じ吉野家の牛皿(並盛)ならタンパク質18g・糖質9g・290kcalで、タンパク質をほぼ保ったまま糖質を大きく落とせる(吉野家の糖質一覧)。いきなりステーキのワイルドステーキ300gはタンパク質60g・糖質2g・560kcalで、1食で1日の目標の半分近くが入る(いきなりステーキの糖質一覧)。足りない日はセブンイレブンのサラダチキン(プレーン)でタンパク質21g・糖質0g・110kcalを足せばいい。
もうひとつ、タンパク質には副産物がある。食事誘発性熱産生(DIT)は栄養素で差があり、タンパク質は摂取エネルギーの20〜30%が熱として消費されるのに対し、糖質は5〜10%、脂質は0〜3%程度とされる。肉や魚に寄せた食事は、食べた分の一部が勝手に出ていく。我慢ではなく、食べ方を変えるだけだ。
まとめ:基礎代謝を味方につける
- 生きているだけで使うエネルギーで、1日の総消費の約6〜7割。30代の参照体重で男性約1530kcal・女性約1160kcal。
- 自分の数値は体重×基準値で概算できる。30代なら男性22.5・女性21.9。体格が参照体重から外れるほど誤差は大きい。
- 筋肉1kgで増える消費は約13kcal。増やすことより、減量中に減らさないことのほうが効く。
- 外食でもタンパク質は積める。体重1kgあたり1.5〜2gを目安に、糖質だけ落とす選び方をする。
減らすことより、守り育てること。土台が高いままなら、多少の背徳飯は帳尻が合う。